【店主インタビュー】田村屋で修行した麺屋ひらさわ店主が語る佐野らーめんの魅力

栃木県佐野市には、全国でも珍しい「青竹手打ち麺」の文化があります。同じ「佐野らーめん」という名前でも、麺の形や食感、スープの味わいは店ごとに大きく異なります。
今回、佐野らーめんナビでは、田村屋で修行を積み独立した「麺屋 ひらさわ」店主にインタビュー。らーめんの世界に入ったきっかけ、佐野らーめんとの出会い、修行時代に学んだこと、そして手打ち麺へのこだわりについてお話を伺いました。
一杯のらーめんの裏側にある技術や考え方を知ると、佐野らーめんはもっと面白くなります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
最初から佐野らーめんを目指していたわけではない?

Q. らーめんの仕事は、最初から佐野らーめんだったんですか?
いや、最初はチェーン店のらーめん屋でしたね。いわゆるセントラルキッチンの形だったので、現場でやることは決まったオペレーションの中で商品を仕上げて提供する、という感じでした。麺もスープも本部から届く形だったので、自分たちが一から作るというわけではなかったんです。
もちろん、それはそれで勉強になることもありました。接客だったり、お店を回すスピード感だったり、飲食店として大事なことはたくさん学べたと思います。ただ、働いているうちにだんだん「もっと自分の手でらーめんを作りたいな」という気持ちが強くなっていったんです。麺やスープを仕込んで、自分の手で一杯を作るようならーめんの世界に興味が出てきました。
インタビュアー:塚原「提供する」のと「作る」のは違う、という感覚だったんですね。
そうですね。同じらーめんでも、作り方や背景を知ると全然違うものに見えてきます。チェーン店では、決まった形で提供することが大事でした。それはそれで完成された仕組みなんですけど、自分としては「どうやってこの味を作っているんだろう」とか「麺はどういうふうにできているんだろう」とか、そういう部分が気になり始めたんです。
らーめんって一杯の料理ですけど、実際には麺もスープも具材もそれぞれに作り方があります。その全部をちゃんと知りたいと思うようになりました。
Q. その頃から独立の気持ちもあったんですか?
ありましたね。最初から強く思っていたわけではないんですが、働いているうちに少しずつ考えるようになりました。もし自分がらーめんを作るなら、どういう一杯になるんだろうとか、そういうことを考えるようになって。その流れの中で佐野らーめんに出会った感じです。
青竹打ちを見て「すごい」と思った


Q. 佐野らーめんのどこに惹かれたんですか?
やっぱり最初は青竹打ちですね。実際に見たときに「こうやって麺を作っているんだ」と驚きました。それまで麺は機械で作るものだと思っていたので、竹を使って人の力で麺を打っている姿がすごく印象に残ったんです。見た目のインパクトもありますし、「らーめんの麺ってこんな作り方もあるんだ」と純粋に驚きました。



見た目のインパクトもありますよね。
ありますね。でも、食べてみてさらに面白いと思いました。手打ちの麺って、一本一本が完全に同じじゃないんです。太さも少しずつ違うし、縮れ方も違う。その不揃いさが食べたときの食感になっていて、機械麺とは違う面白さがありました。



均一じゃないことが魅力になるんですね。
そうなんです。普通は揃っているほうがいいと思われるんですけど、手打ち麺はその違いが個性になります。ひと口ごとに食感が少し変わるのも面白いですし、スープの絡み方も場所によって違うんです。そういうところに魅力を感じました。
青竹手打ちとは?
佐野らーめんにはいくつかの系統がありますが、その中でも田村屋系は人気の高い系統のひとつです。手打ち感のある縮れ麺と、動物系の旨味を感じるスープが特徴です。ただし同じ田村屋系でも、麺やスープの表情は店ごとに違います。「系統」を知ると、佐野らーめんの食べ歩きはさらに面白くなります。
修行先に田村屋を選んだ理由


Q. 修行先として田村屋を選んだ理由は何だったんですか?
もちろんらーめんも好きだったんですが、最終的には社長の人柄が大きかったですね。修行先って、ただ技術を学ぶ場所ではないと思うんです。どんな人のもとで働くかというのは、長く続けていくうえでとても大事だと思いました。
いろいろ話を聞く中で、この人のところで働いてみたいと思えたのが田村屋でした。



「誰に学ぶか」ですね。
そうですね。らーめんの技術だけでなく、お店の考え方や仕事への向き合い方も学べる場所がいいと思っていました。実際に入ってみて、現場で学ぶことは本当に多かったです。
らーめん作りだけじゃなくて、お店全体の動き方だったり、スタッフとの関係だったり、いろいろな部分で勉強になりました。
田村屋系らーめんとは?


佐野らーめんにはいくつかの系統がありますが、その中でも田村屋系は人気の高い系統のひとつです。手打ち感のある縮れ麺と、動物系の旨味を感じるスープが特徴です。ただし同じ田村屋系でも、麺やスープの表情は店ごとに違います。「系統」を知ると、佐野らーめんの食べ歩きはさらに面白くなります。
修行で学んだこと


Q. 修行で学んだことを一つ挙げると?
一言で言うと「根性」ですかね(笑)でも、それだけじゃなくて「目配り・気配り・心配り」は本当に大きかったです。お店って、ただらーめんを作るだけでは回らないんですよね。お客さんが今どういう状況か、スタッフが何をしているか、そういうことを常に見ておく必要があります。



らーめんの技術だけではないんですね。
そうなんです。もちろん麺を打ったりスープを作ったりする技術も大事ですが、それ以上にお店全体を見る力が必要だと思いました。自分のお店を持ってみて、あのとき学んだことはすごく役に立っていると感じます。
手打ち麺の魅力


Q. 佐野らーめんの手打ち麺の魅力は何ですか?
やっぱり「ばらつき」ですね。機械麺だと麺の太さや形がきれいに揃いますが、手打ち麺は少しずつ違います。その違いが食感になり、店ごとの個性になります。



同じ手打ちでも違うんですね。
全然違います。同じ手打ちでも、麺の感じはお店によってかなり変わります。手打ち感が強い麺もあれば、比較的整った麺の店もあります。そこが佐野らーめんの面白さだと思います。食べ比べてみると、同じ「佐野らーめん」でも全然違うことが分かると思います。
うちのらーめんは少し違う


Q. お店のらーめんは田村屋とは違いますか?
ベースはありますが、そのまま同じものではないですね。修行で学んだことを土台にしながら、自分なりに研究して今のらーめんになっています。スープの作り方も少しずつ調整していますし、細かい部分は試行錯誤の積み重ねです。



チャーシューも特徴がありますね。


そうですね。トロトロ系よりも、肉感のあるチャーシューを大事にしています。噛んだときに肉の感じがしっかりあるほうが、自分のらーめんには合うと思っています。ネギとの相性もいいので、そのバランスを意識しています。
人気メニュー


Q. 一番人気は?
普通のらーめんですね。やっぱりまずはシンプルな一杯を頼まれる方が多いです。味玉らーめんも人気ですし、ワンタンメンもよく出ます。最初は基本のらーめんを食べて、そこからいろいろ試してもらえると嬉しいですね。


Q. 店主としておすすめの一杯はありますか?
そうですね、個人的におすすめしたいのは「辛ネギちゃーしゅーめん」ですね。うちのらーめんは基本的にあっさりしたスープなので、そこに辛ネギが入ると味に少しアクセントが出るんです。ネギの風味と辛味がスープに合っていて、また違った楽しみ方ができると思います。


まとめ
今回のインタビューを通して感じたのは、佐野らーめんはただの「ご当地らーめん」ではなく、職人の技術と考え方が詰まった一杯だということです。
青竹で打つ手打ち麺は、一本一本がまったく同じ形ではありません。そのわずかな違いが食感になり、麺の個性となり、最終的には店ごとのらーめんの表情をつくり出しています。そして同じ佐野らーめんでも、スープの作り方や麺の仕上げ方、具材の考え方はお店によって大きく異なります。だからこそ食べ歩いてみるとその違いがはっきり分かり、佐野らーめんの奥深さを感じることができます。その中で、ひらさわのらーめんはとても「バランス」を大切にした一杯だと感じました。手打ち麺の個性を活かしながら、スープとの調和を大事にすること。そして、トロトロではなく肉の食感を残したチャーシューなど、派手さよりも「らーめんとしてのまとまり」を重視しているところが印象的でした。



インタビューを通して感じたのは、ひらさわの人柄そのものです。決して大きな言葉で語るわけではなく、落ち着いた口調で、ひとつひとつ丁寧に話してくれる。その姿からは、らーめん作りに対する真面目さや誠実さが伝わってきました。日々の積み重ねを大事にする、そんな職人の姿勢が、そのまま一杯のらーめんに表れているように感じます。
「ばらつきが個性になる」
この言葉は、手打ちらーめんの魅力をよく表しています。そしてそれは、佐野らーめんの文化そのものでもあります。佐野らーめんは、特別な日に食べるらーめんというより、日常の中でふらっと食べられるらーめん。それでいて、店ごとに違う個性があります。そして、その中にあるのが、店主それぞれの考え方や人柄です。ひらさわのらーめんもまた、その人柄がそのまま表れた一杯なのかもしれません。
まずは一杯食べてみる。
そして別のお店にも行ってみる。
そんなふうに食べ歩くことで、きっと手打ち麺の面白さや店ごとの違いが見えてくるはずです。その中で、ひらさわのらーめんが持つ「丁寧さ」と「バランス」を、ぜひ実際に味わってみてください。佐野の街に根付く手打ちらーめん文化を、これからも多くの人に知ってもらえたら嬉しいですね。










